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a madman's diary

狂人日記

芭蕉パイセン

いつかの夕方、夏の終りも近かった。バイトを終えて山手線に揺られる。とても疲れていた。ゆらりと東京駅で降りて夜行バスに乗り、朝の六時くらいにバスを降りた。

朝日にうっすら汗ばみながら、高館義経堂(たかだち ぎけいどう)へ登っていく。つくつく法師はこんなに静かに啼くのか。と、ハッと風が来た。若くて強い、青い草の匂ひ。まず幼いひとり娘を、次に生涯唯ひとりしかとらなかった妻を手にかけて、愛するふたりの隣で腹を切る義経の最期をおもった。

石段を降りて、 バイト先のインドカレー屋に電話をかける。ヤブ蚊が五月蝿い。店長は「キミ、モウコナクテイイカラ」と言って、電話を切った。私は東京まで鈍行を乗り継ぎ、上野で蕎麦を食べて帰った。《夏草や兵どもが夢のあと》

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