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a madman's diary

狂人日記

エスカルゴ

春、高校を卒業して、法学部に入学した。法学部法律学科、学内でも出色(しゅっしょく)の真面目な集団である。

時間割の都合、大学生になって一番はじめに出た授業は、小さなフランス語のクラスだった。席に着いて、とくに黙っている理由もないので、しぜん隣に話しかける。向こうもそんな様子で応じた、

「どうすれば、ひと殺せるかな、って。」

法学部にきたのは、そういうわけらしかった。

私たちはそのクラスで、動詞の時制を習い、パリで就活する際のスーツの選び方を指導され、エスカルゴの正しい食べ方を叩き込まれて、優秀な成績でフランス語をパスした。そうしてまた春がやってきて、私は法学部を中退した。

本来ならば一緒に卒業するはずだった年の冬。どうだ、ひとは殺せそうかと尋ねると、その人はワッと泣き出した、

「ひと、殺せな、いんだよね。」

それから程なくして、彼女は、ほとんど婚約していた男とえらくさっぱり別れた。私はいま、文学部にいる。

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