a madman's diary

狂人日記

スウィング

オージービーフのステーキとフライドポテトとイカスミ・スパゲティとペペロンチーノとピザ。

私たち家族はいつも店の角(すみ)の広いテーブルに着いてそれらを頼んだ。その薄らよごれた片田舎のスナック《スウィング》は、市立図書館の隣りにあったせいか、マスターにはどこか「公序良俗」という言葉が似合った。

父の隣りに座る私は「御嬢さん」と呼ばれて、子供特有の細いからだでステーキをほおばり、桃のジュースを飲んだ。車を運転する父は飲まなかったし、女の子のすらりとした健康の前で、他のお客のおじさんたちは「悪い事はできない」と照れて、おとなしくしている。

マスターは、私が東京の大学に通っているあいだに亡くなって、お店はもうない。

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